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富士登山のシーズンが、いよいよ近づいてきました。
「本番まであと1ヶ月。今からでも間に合うんだろうか」——そう不安に感じていませんか。山小屋はもう満室かもしれない。体力に自信がない。準備が多すぎて、何から手をつければいいのかわからない。
私たちは理学療法士として、日々「体の使い方」を専門に扱っています。その視点から言えるのは、残り1ヶ月でもやれることはたくさんあるということです。大切なのは「限られた時間で何に絞るか」です。
この記事では、本番まで1ヶ月を切った方に向けて、今からやるべきことを「体づくり・持ち物・山小屋・当日」に絞ってお伝えします。
✅ この記事でわかること
- 残り1ヶ月でも間に合う体づくり(PT直伝)
- 直前に揃えておきたい持ち物リスト
- 山小屋がもう満室でも諦めない方法
- 登山当日までの最終チェック
目次
あと1ヶ月、まず何から手をつける?
残り1ヶ月なら、やることに優先順位をつけるのが何より大切です。あれもこれもと手を広げると、結局どれも中途半端になります。私たちが直前期に動く順番は、こうです。
まず今すぐやること
- 山小屋の予約状況を確認する(満室ならキャンセル待ちへ。あとで詳しく説明します)
- 足りない装備をリストアップして、今週末までに揃え始める(試す時間を残すため)
- 体づくりを今日から始める(1ヶ月でも体は変わります)
1週間前にやること
- 装備をひと通り試す(特に登山靴は近所で慣らし履きを)
- 天気の傾向を見ながら、予備日も考えておく
3日前にやること
- 荷物のパッキングを完成させる(前日にあわてないよう、余裕をもって)
前日にやること
- 荷物の最終確認をする
- 早めに寝て、深酒は避ける(睡眠不足は高山病のリスクを高めます)
順番に見ていきましょう。

1ヶ月でも間に合う体づくり
富士山は標高3,776m。吉田口から登ると往復約15kmを9時間以上かけて歩きます。「1ヶ月では筋肉はつかない」と思うかもしれません。
しかし、筋肉量が増える前から、体の動かし方・使い方は1ヶ月でも大きく変わります。まず今日から、次の3つを始めてください。
① 有酸素運動で心肺機能を上げる
登りで息が上がる最大の原因は、心肺機能の不足です。富士山の登りは標高差約1,500mを数時間かけてゆっくり登り続けます。「速く走れる体」ではなく、「長く動き続けられる体」が必要です。
おすすめは毎日30分のウォーキングです。ジョギングより続けやすく、関節への負担も少ない。慣れてきたら坂道や階段を取り入れると、より実践的な負荷になります。
② 「下り」に備えた筋トレ
富士山で体が壊れるのは、ほぼ下りです。急斜面の下りでは、体重の3〜5倍の負荷が膝にかかります。これを受け止めるのが大腿四頭筋(太ももの前の筋肉)です。
基本:スロースクワット
椅子に座るようにお尻を後ろに引きながら、股関節から曲げていきます。膝とつま先は同じ方向を向くように意識し、足裏全体で体を支えてください。5秒ほどかけてゆっくり下ろし、ゆっくり戻します。10回×2セット、週3日から始めてください。

応用:ブルガリアンスクワット
片足を後ろの椅子や段差に乗せて行うスクワットです。前の膝とつま先が同じ方向を向くように保ちながら、膝が90度くらいになるまで下ろします。下山時の「片足に体重が乗る瞬間」に近い動きを鍛えられるため、スロースクワットに慣れてきたら取り入れてみてください。こちらも10回×2セットが目安です。

📖 「自分は何を優先して鍛えればいい?」と迷う方へ
息切れしやすい人・下りで膝が不安な人では、優先すべき準備が変わります。残り4週間で何に絞るかを弱点タイプ別に整理した、理学療法士しょうのnoteがあります。→ 「富士登山まであと4週間。『今からじゃ遅い』と思う人に伝えたい準備の話」(有料note・無料公開部分あり)
下りの膝を守る歩き方は技術なので、読むだけでも変わります。→ 「下山で膝が痛い人へ|理学療法士が教える”疲れにくい歩き方”」(有料note・無料公開部分あり)
③ 高山病対策として知っておくこと
高山病は体力や年齢と関係なく、誰にでも起こりえます。原因は標高が上がることで気圧が下がり、血液中の酸素濃度が低下することです。
体で予防できることは限られていますが、実践できる対策が2つあります。
ひとつは五合目(標高約2,300m)に着いたらすぐ登らず、1時間ゆっくり過ごすことです。体が高度に慣れる前に登り始めると、上部でガクッと体調が崩れます。焦る気持ちはわかりますが、ここでの1時間が登頂率を大きく左右します。
もうひとつはゆっくり登ることです。私たちは1時間に200〜300mの標高上昇を目安にペースをコントロールしています。水分もこまめに補給します。脱水は高山病の症状を悪化させるため、喉が渇く前に少量ずつ飲む習慣を登山前から身につけておくと安心です。

高山病の症状・見分け方・対処法については、別の記事で詳しく解説する予定です。
今から揃える持ち物リスト
「何を持っていけばいいかわからない」というのが、富士山登山の準備で一番多い悩みです。直前に慌てて買うと、一度も試さないまま本番を迎えることになります。今から揃えて、一度使っておくのが理想です。ここでは私たちが実際に選んでいる装備を、3つのカテゴリに分けて紹介します。
必携装備(ないと危険)
富士山は7月・8月でも山頂付近の気温は5〜10℃程度になります。天候の変化も急で、晴れていた空が30分で暴風雨になることも珍しくありません。以下は「あって当たり前」ではなく「ないと登山が成立しない」ものです。
| 装備 | 選ぶポイント |
|---|---|
| 登山靴 | くるぶしを覆うミドルカット以上推奨。新品は必ず事前に慣らし履きをすること |
| レインウェア(上下セパレート) | 防水透湿素材(ゴアテックス等)。コンビニのカッパは強風・低温に耐えられないため不可 |
| 防寒着(フリース・ダウン) | 山頂は真夏でも防寒着が必要。薄くてコンパクトなものを選ぶ |
| 帽子 | 登りは日差しを遮るキャップ、山頂付近の風・寒さには耳まで覆えるニット帽が便利。2枚持ちが理想 |
| 手袋 | 山頂付近の岩場では手をつく場面があり、軍手でも代用可。ただし山頂は気温が低く風も強いため、防寒性のある薄手のグローブが理想。夏でも必ず持参する |
| トレッキングポール | 下りの膝負担を軽減してくれる。折りたたみ式が収納しやすい |
| ヘッドライト | 山小屋泊でも夜間・早朝の行動に必須。予備電池も忘れずに |
| 飲み物(水・スポーツドリンク) | 最低1.5〜2L。山小屋でも購入できますが500mlで500円前後。水分補給は喉が渇く前にこまめに |
| 行動食(ゼリー・ナッツ・チョコレート) | 食欲がない高山でも口に入れやすいものを複数種類。シャリバテ(食事=シャリが足りずにバテること。登山用語)は急に来ます |
| 日焼け止め | 標高が高いほど紫外線は強くなる。SPF50以上推奨 |
| 小銭(10円・100円硬貨) | 富士山のトイレは有料(1回100〜300円)。電子マネー不可の場所が多いため硬貨を用意しておくと安心 |
PTならではの「体ケア」グッズ
一般的な持ち物リストにはあまり載っていませんが、私たちがいつも持っていくものです。
テーピング 膝や足首の不安定感を感じる方に。貼り方をあらかじめ練習しておくと、山中で慌てずに対処できます。
インソール(中敷き) 登山靴の純正インソールは薄いことが多く、長時間の歩行で足裏・膝・腰に疲労が蓄積します。アーチサポートのあるインソールに変えるだけで、疲れ方が変わります。
携帯酸素缶 高山病の予防・応急処置として持っておくと安心です。ただし、吸い続けないと効果が持続しないため「根本的な解決策」にはなりません。あくまで一時的なサポートとして携帯します。
鎮痛剤(ロキソニン等) 「飲まなくていい」に越したことはありませんが、膝や筋肉の痛みが出たときの選択肢として持っておきます。私たちはいつもザックに入れています。
あって良かった・なくて後悔したもの
サングラス 標高が高いほど紫外線は強く、晴天時の照り返しは想像以上です。なくても登山は成立しますが、あると目の疲れが軽減されます。
コンタクトレンズの方は要注意 山頂付近は強風で砂やごみが舞いやすく、コンタクトレンズ着用での登山は目のトラブルにつながることがあります。私自身、コンタクトのまま登って後悔した経験があります。メガネで登るか、予備のメガネを持参するか、ワンデータイプのコンタクトを替えで持っていくことをおすすめします。サングラスはこのような場面でも目を守る効果があります。
着替え(下着・靴下) 山小屋泊の場合、汗で濡れたまま眠ると体が冷えて翌朝の体調に響きます。かさばらない速乾素材を1セット忍ばせておくだけで、快適さが全然違います。
耳栓・アイマスク 山小屋は大部屋で見知らぬ人と雑魚寝になります。いびきや物音で眠れないと、翌朝の体力に直接影響します。100円ショップのもので十分です。
ゴミ袋・ジップロック 大きめのゴミ袋は荷物の防水・ゴミ入れ・緊急時の防寒と3役こなせます。ジップロックはさらに便利で、着替えをコンパクトにまとめたり、ゴミの匂いを封じたり、濡れたものを他の荷物と分けたりと重宝します。どちらも100円ショップで揃います。
山小屋がもう満室なら
富士山の山小屋は、5月の予約開始と同時に主要な山小屋から順に埋まっていきます。本番まで1ヶ月を切ったこの時期、「予約しようとしたら満室だった」という方も多いはずです。しかし、まだ諦めるのは早いです。
キャンセル待ちを狙う
私たちも予約開始直後の段階で希望日は満室でしたが、キャンセル待ちで1泊分を確保しました。その実録は→富士山の山小屋、どうやって予約した?4日後にはキャンセル待ちだった【吉田口・実録】で詳しく書いています。
直前期はキャンセルが出やすくなります。予約サイトをこまめに確認したり、山小屋に直接電話で空き状況を聞いたりする価値は十分にあります。山小屋によって公式サイト・電話・予約サイトと窓口が異なるため、候補をいくつか決めて並行して当たるのがコツです。
何合目に泊まる?
「何合目の山小屋に泊まるか」が翌日の体力を左右します。8合目前後(標高約3,000〜3,200m)に宿泊すると、翌朝のご来光に間に合わせながら無理なく山頂を目指せます。キャンセル待ちで選べる余地が少ない場合でも、できるだけ高い位置の山小屋を優先すると、当日が楽になります。
山小屋泊ならではの持ち物
山小屋は寝具が貸し出されますが、大部屋での雑魚寝が基本です。快適に過ごすために追加で持っていくと良いものをまとめます。
| 持ち物 | 理由 |
|---|---|
| 耳栓・アイマスク | いびき・物音・早朝の明るさ対策。睡眠の質が翌日の体力に直結する |
| 着替え(下着・靴下) | 汗で濡れたまま寝ると体が冷える。速乾素材を1セット |
| モバイルバッテリー | コンセントがない山小屋が多い。翌朝のスマホ・カメラのために必須 |
| 現金(多めに) | 山小屋内の飲食・トイレはすべて現金。カード・電子マネー不可の場所が多い |
登山当日までの最終チェック
準備を整えても、前日・当日の過ごし方で体の状態は大きく変わります。やることはシンプルですが、ここを疎かにすると当日に後悔します。
3日前にやること
荷物のパッキングを完成させる 「前日にやればいい」はバタバタの元です。3日前には荷物を完成させておきましょう。チェックリストを見ながら1つずつ確認するのが確実です。
前日にやること
荷物の最終確認をする パッキングは3日前に済ませているので、前日は抜け漏れがないかを確認するだけでOKです。余裕をもって当日を迎えましょう。
早めに就寝する 睡眠不足は高山病のリスクを高めることが知られています。山小屋泊の場合、翌朝は深夜〜早朝に出発することが多いため、前日は22時には布団に入ることを目標にしてください。
アルコールを控える 「前夜祭」と言いたい気持ちはわかりますが、アルコールは脱水を促進し、翌日の体調に影響します。登山後のビールを楽しみに、前日は我慢してください。
天気予報を最終確認する 富士山の天気は変わりやすく、前日夜の予報が最も信頼性が高くなります。雷・強風の予報が出ている場合は、中止・延期を真剣に検討してください。
当日の朝にやること
朝食をしっかり食べる 高山では食欲が落ちることがあります。登山口を出発する前に、しっかりエネルギーを補給しておくことが大切です。
ストレッチをする 10分でも体を動かしてから出発するだけで、最初の1時間の疲れ方が変わります。股関節・ふくらはぎ・太ももを重点的に伸ばしてください。
トイレを済ませる 富士山のトイレは有料(1回100〜300円)で、場所も限られています。出発前に必ず済ませてから登り始めてください。
まとめ:残り1ヶ月を味方にする
本番まで1ヶ月。焦る気持ちもあると思いますが、やることを絞れば、まだ十分に間に合います。
- 今すぐ:山小屋の状況を確認する(満室ならキャンセル待ち)。足りない装備を揃え始める。体づくりを今日から始める
- 1週間前:装備をひと通り試す
- 3日前:荷物のパッキングを完成させる
- 前日:荷物の最終確認をして、早く寝る
- 当日:朝食・ストレッチ・トイレを済ませてから出発する
準備に手をかけた分だけ、山での余裕が生まれます。装備が揃っていれば突然の雨にも慌てない。体ができていれば下りで膝を抱えずに済む。知っていれば、高山病のサインに早く気づける。
富士山は「登ること」がゴールではありません。登って、下りて、笑顔で帰ること。そのための準備を、ぜひ今日から始めてください。
知識は、一番軽い登山道具です。
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本記事の体づくり・高山病に関する内容は一般的な情報提供を目的としています。体調に不安がある場合は、事前に医療機関にご相談ください。