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富士登山の本番が、いよいよ近づいてきました。

「せっかくなら、一度どこかの山で練習しておきたい」——そう考えて、この記事にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。しかし、いざ練習しようと思うと「何の山に登ればいいのか」がわからない、という声をよく聞きます。

私たちは理学療法士として、日々「体の使い方」を専門に扱っています。その視点からお伝えしたいのは、練習の山は「体のどの力を試すか」という目的で選ぶと、本番にぐっと活きるということです。

この記事では、富士登山の練習にぴったりな関東の山を、目的別に5座紹介します。難易度のやさしい山から順に並べているので、ご自身の経験に合わせて選んでみてください。

この記事でわかること

  • 富士山の前に「練習の山」を登る意味(理学療法士の視点)
  • 「体のどの力を試すか」で選ぶ、練習の山の選び方
  • 目的別・難易度順に選んだ関東の練習向き5座
  • 私たちが本番直前に「塔ノ岳」を選んだ理由

目次

  1. なぜ富士山の前に「練習の山」を登るのか
  2. 練習の山の選び方|「体のどの力を試すか」
  3. 富士登山の練習に登りたい山5選
  4. 私たちが今回「塔ノ岳」を選んだ理由
  5. 練習の山に登るときの注意点
  6. まとめ:5座の早見表と次のアクション

なぜ富士山の前に「練習の山」を登るのか

富士山は標高3,776m。五合目から山頂までは標高差約1,400mを、数時間かけて登り続けます。これは、日常生活ではまず経験しない大きな負担です。

「本番で初めてこの負担を体に与える」のは、できれば避けたいところです。練習の山に一度登っておくと、次の3つを本番前に確かめられます。

① 自分の体がどう反応するか 息が上がり始める登りの強さや、先に疲れてくる筋肉の場所は、人によって違います。一度試しておくと、本番でのペース配分の感覚がつかめます。

② 装備が自分に合っているか 本番で使う道具を一度持って歩いておくと、自分に合うかどうかが見えてきます。練習で確かめておきたいのは、次のような点です。

  • 登山靴が足に合っているか(靴擦れが起きないか)
  • ザックが肩や腰に食い込まないか
  • レインウェアやトレッキングポールを扱いやすいか

新品を本番でいきなり使うと、靴擦れやトラブルのもとになります。練習は、そのまま装備の試運転になります。

③ 心の準備ができる 長い登りのきつさや、下りで膝に来る感覚を一度体験しておくと、本番で「これは想定内だ」と落ち着いて対処できます。知っているだけで、不安はぐっと小さくなります。

つまり練習の山は、体・装備・心の3つをまとめてリハーサルできる場になります。

なお、本番までの体づくりや持ち物の全体像は、富士登山、今からでも間に合う|理学療法士が教える残り1ヶ月の体づくりと持ち物リストでまとめています。練習と本番準備をあわせて進めると、より安心です。


練習の山の選び方|「体のどの力を試すか」

ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。

練習の山を「なんとなく有名だから」で選ぶと、本番に活きにくいことがあります。富士登山で求められる体の力は、大きく次の4つに分けられます。

試したい力どんな場面で必要か
登りの心肺・ペース標高差約1,400mを登り続けるとき。息を上げすぎないペース管理
下りの膝・太ももの筋肉長い下りで膝を守るとき。富士山で体を痛めるのは、ほぼ下り
岩場・不安定な足場山頂付近の岩がちな道を歩くとき。足の置き方の慣れ
標高差に耐える持久力登り・下りを通して長時間動き続ける体力

ひとつの山で、これらすべてを完璧に試すことはできません。だからこそ、「今回はこの力を試そう」と目的を決めてから山を選ぶのがおすすめです。

次の章では、この4つの視点をふまえて、関東の練習向きの山を5座紹介します。やさしい山から順に並べているので、上から見ていってください。

気になる山にジャンプ:

いちばん試したいことから練習の山を選ぶ早見図(①高尾山〜⑤塔ノ岳)


富士登山の練習に登りたい山5選

ここからは、私たちが「この目的ならこの山」と考える5座を、難易度のやさしい順に紹介します。数値はYAMAPを基準にしています。

① 高尾山(東京・599m)|まず歩いてみる・装備を試す

登山靴・ザック・トレッキングポールと、ケーブルカーのある低山と富士山(高尾山のイメージ)

項目データ
標高599m
おすすめコース稲荷山コース(登り片道約3.1km・標高差約400m)
コース形態ピストン、または登りと下りでコースを変える周回
登りの目安約1時間30分
アクセス京王線「高尾山口」駅から徒歩すぐ
富士山ビュー晴れた日は山頂から望める

登山の経験がほとんどない方が、最初の一歩として選ぶのにぴったりの山です。

高尾山には登山道がいくつもあります。舗装されて歩きやすい1号路から、自然林や沢沿いを歩く道まで、1号路〜6号路と稲荷山コースがそろっています。この中で練習におすすめなのは、土の道と適度な登りが続く稲荷山コースです。登山らしい足場を歩けるので、本番に近い感覚がつかめます。登りは稲荷山コースを使い、下りは舗装された1号路や緑の濃い6号路に変えると、違った雰囲気を味わいながら下山できます。

ここで試したいのは、歩き方と装備の確認です。登山靴で長い距離を歩く感覚や、ザックを背負ったときの体の重さに慣れておきましょう。本番で使う道具を一度持って歩いておくと、自分に合うかどうかが見えてきます。アクセスがよく人も多いので、安心して試せます。

なお、私たちが実際にこの高尾山から小仏城山までを歩いた記録は、雨で塔ノ岳から高尾山に変えた日|富士登山の練習に高尾山〜城山11kmを歩いた記録【実践編①】にまとめています。天候で行き先を変えた判断や当日のペースなど、リアルな様子はこちらをご覧ください。

② 大野山(神奈川・723m)|富士山ビューで家族の足慣らし

草原の丘の道を歩く親子と、遠くに望む富士山(大野山のイメージ)

項目データ
標高723m
おすすめコース谷峨駅〜大野山〜山北駅(約11.4km・縦走)
コース形態縦走(登る駅と下りる駅が別)
累積標高上り約698m
標準コースタイム約4時間26分(出典:YAMAP)
アクセスJR御殿場線「谷峨」駅から徒歩。新宿から約1時間20分
富士山ビュー山頂の草原から、晴れた日はほぼ正面に望む

山頂が広い草原になっていて、晴れた日には富士山をほぼ正面に望める気持ちのよい山です。危険箇所が少なく道もよく整備されているため、家族連れや初心者でも歩きやすいのが魅力です。

ここで試したいのは、富士山を眺めながら長めの距離を歩く持久力です。高尾山より歩行距離が長く、縦走(山を越えて別の駅へ下りること)を体験できます。私たちも実際に5歳の子どもと歩きました。そのときの様子は大野山|富士山が見えなかった日でも「来てよかった」理由で詳しくお伝えしています。なお、谷峨駅から登って山北駅へ下るルートでは、山北側の下りの階段が急なので、下りの足の運びを意識する練習にもなります。

③ 三ツ峠山(山梨・1,785m)|富士山の絶景でモチベを上げる+岩場に慣れる

岩場の向こうに大きくそびえる富士山(三ツ峠山のイメージ)

項目データ
標高1,785m
おすすめコース三つ峠登山口バス停から山頂へピストン(登り約1時間30分)
コース形態ピストン(同じ道を戻る)
アクセス富士急行線「河口湖」駅からバス約25分
富士山ビュー「富士山の展望台」と呼ばれるほどの大絶景

「富士山の展望台」とも呼ばれ、山頂から目の前に大きな富士山が広がる山です。本番のモチベーションを高めたいときに、ぜひ登っておきたい一座です。

ひとつ知っておきたいのは、登る道によって難易度が大きく変わる点です。三つ峠登山口バス停は標高約1,300mの高い場所にあるため、そこからだと標高差が小さく、登り約1時間30分と比較的おだやかに歩けます。一方、ふもとの三つ峠駅から登ると標高差は約1,200mにもなり、一気に本格的な登山になります。練習で富士山の景色を楽しみたいなら、まずは登山口バス停からのコースがおすすめです。下りは同じ道を戻ります。

山頂直下には屏風岩という大きな岩壁があり、一般の登山道にも岩がちな場所があります。足の置き方や、岩場での体の使い方に慣れておきたい方に向いています。

下山後の楽しみもあります。三つ峠駅の近くには日帰り温泉の三ツ峠グリーンセンターがあり、登山の疲れを湯につかって癒やせます。富士山の絶景と温泉をセットで味わえるのは、家族で訪れるときにもうれしいポイントです(営業時間などは事前にご確認ください)。

④ 大山(丹沢・1,252m)|「下りの膝」を鍛える

石段の下り坂を一歩ずつ慎重に下る登山者の脚もと(大山のイメージ)

項目データ
標高1,252m
おすすめコース阿夫利神社下社→山頂→見晴台→下社(周回・ケーブルカー利用)
コース形態周回(下りは見晴台方面へ)
標高差約568m(下社から・ケーブルカー利用時)
標準コースタイム約2時間45分(休憩除く・周回)
アクセス小田急線「伊勢原」駅からバス+ケーブルカー
富士山ビュー山頂や見晴台から望める

丹沢の人気の山で、ケーブルカーを使えば標高差をおさえて登れます。「初級向け」と紹介されることも多いのですが、実際に登ると翌日に強い筋肉痛が出やすい山として知られています。その理由は、下りにあります。

下山道は階段状に整備された道や、細かい岩が転がる道が続き、長い下りで膝と太ももにしっかり負担がかかります。富士山で体を痛めるのはほぼ下りなので、この大山の下りは絶好の練習になります。下りでゆっくり、膝とつま先を同じ方向に向けて、足裏全体で着地する——本番で使う下り方を、ここで体に覚えさせておきましょう。

⑤ 塔ノ岳(丹沢・1,491m)|登りの心肺とペース配分・本番に最も近い負荷

山頂まで長く続く尾根を登る登山者と、遠くに望む富士山(塔ノ岳のイメージ)

項目データ
標高1,491m
おすすめコース大倉尾根を往復(片道約7km・標高差約1,200m)
コース形態ピストン(同じ大倉尾根を下る)
登り・下りの目安登り約3時間40分/下り約2時間20分
アクセス小田急線「渋沢」駅からバス「大倉」下車
富士山ビュー山頂からほぼ360度。富士山も一望

今回紹介する中で、もっとも登りごたえのある山です。大倉尾根は通称「バカ尾根」と呼ばれ、ふもとから山頂までひたすら登りが続きます。標高差は約1,200m。これは、富士山の五合目から山頂までの標高差(約1,400m)にもっとも近い負荷です。

ここで試したいのは、登りの心肺機能とペース配分です。長い登りを息を上げすぎずに歩き続ける感覚は、富士山本番でそのまま役立ちます。私たちが目安にしているのは、1時間に標高200〜300mほどのゆっくりしたペースです。山頂からは富士山を含むほぼ360度の眺望が広がり、下りでは膝の練習もできる——まさに富士登山の予行演習にうってつけの山です。

富士山(五合目→山頂 約1,400m)と塔ノ岳(大倉→山頂 約1,200m)の標高差くらべ。差は約200m


私たちが今回「塔ノ岳」を選んだ理由

ここまで5座を紹介してきましたが、どれを選ぶかは「今の自分が何を試したいか」で変わります。そこで参考までに、私たちが今回どの山を選んだのかをお伝えします。

私たちはいま、富士登山の本番を目前に控えています。足慣らしの段階はすでに終え、最後に確かめたいのは「本番に最も近い負荷で、自分たちの体とペースが通用するか」でした。

その目的に照らすと、答えは5座の中でもっとも登りごたえのある塔ノ岳でした。標高差約1,200mは富士山の五合目から山頂までにいちばん近く、登りの心肺・ペース配分・下りの膝・長時間の持久力を、一度の山行でまとめて試せます。本番が近いからこそ、あえて負荷の高い山を選んだということです。

逆に言えば、本番までまだ時間があるなら、高尾山や大野山から段階を踏むのが安全です。「本番までの残り時間」と「今の自分の経験」に合わせて、登る山を選んでください。


練習の山に登るときの注意点

練習の山は、ただ登って終わりではもったいないです。本番に活かすために、次の4つを意識してみてください。

本番で使う装備で登る

練習は装備の試運転を兼ねています。とくに登山靴は、本番までにしっかり履き慣らしておくことが大切です。新品の靴をいきなり本番で使うと、靴擦れで一日中つらい思いをすることがあります。練習の山で何度か歩いて、足になじませておきましょう。

「速く登らない」ペースを試す

練習でやりがちなのが、つい頑張って速く登ってしまうことです。しかし富士山で大切なのは、息を上げすぎずに長く歩き続けることです。私たちは1時間に標高200〜300mほどのゆっくりしたペースを目安にしています。練習のうちに、この「物足りないくらいの遅さ」を体に覚えさせておきましょう。登りの途中での休憩のとり方は、登山で差がつく休み方|疲れを残さない小休止・大休止の使い分けも参考にしてください。

水分と行動食をこまめにとる

夏の低山は気温が高く、富士山以上に汗をかくこともあります。喉が渇く前に少量ずつ水分をとり、行動食でこまめにエネルギーを補給する習慣を、練習のうちにつけておくと安心です。暑い時期は、早めの時間に登り始めて気温が上がる前に下山する計画も有効です。夏の登山の熱中症対策は子どもの熱中症、登山前に知っておけば怖くない|予防・サイン・応急処置の完全ガイドで詳しく解説しています(大人にも役立つ内容です)。

下りを軽視しない

富士山で体を痛めるのは、ほとんどが下りです。練習でも、下りこそ集中してください。膝とつま先を同じ方向に向け、足裏全体でそっと着地する。トレッキングポールを使うと、膝への負担を分散できます。下りの歩き方を練習の山で身につけておくことが、本番でのケガ予防に直結します。

📖 下りの膝をもっと深く知りたい方へ

下りで膝を守る歩き方は技術です。読むだけでも変わるので、理学療法士しょうのnoteもおすすめです。→ 「下山で膝が痛い人へ|理学療法士が教える”疲れにくい歩き方”」(有料note・無料公開部分あり)

弱点タイプ別に残り4週間の準備を整理したnoteもあります。→ 「富士登山まであと4週間。『今からじゃ遅い』と思う人に伝えたい準備の話」(有料note・無料公開部分あり)


まとめ:5座の早見表と次のアクション

最後に、今回紹介した5座を早見表でまとめます。

難易度試せる体の力
① 高尾山やさしい入門・装備と歩き方の確認
② 大野山やさしい〜ふつう富士山ビューで長めの距離・持久力
③ 三ツ峠山ふつう富士の絶景でモチベUP・岩場の足運び
④ 大山ややきつい下りの膝・太ももを鍛える
⑤ 塔ノ岳きつい登りの心肺・ペース・本番に最も近い負荷

大切なのは、いきなり難しい山を目指すことではありません。「今の自分が何を試したいか」「本番まで何日あるか」に合わせて、一座を選んでみてください。まずは一つ登ってみると、富士山本番への不安がぐっと小さくなるはずです。そして練習を終えたら、いよいよ本番の計画です。山小屋の予約については富士山の山小屋、どうやって予約した?4日後にはキャンセル待ちだった【吉田口・実録】で実体験をまとめています。

知識は、一番軽い登山道具です。


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本記事の体づくり・登山に関する内容は一般的な情報提供を目的としています。体調に不安がある場合は、無理をせず、事前に医療機関にご相談ください。